 《挿絵・室内の一隅》  《挿絵・水郷スケツチ》  《挿絵・道路スケツチ》 近来の自分のスケツチブツクは、風景の場合大抵、一枚々々景色の小品を作つて行くといふ意昧でなく、総てエチユードの意味である。故に、スケツチブツクの一冊が荒い線だけで白つぽいままで終つて了ふ事もあり、初めから終迄真黒に成つて一冊が終る事もある。一枚一枚纒つたスケツチは近頃のものには殆どない。 尤もスケツチブツクの中には、何か人間の生活等の事件を拾つている啓示がある。それ等は多少自分の道楽味のやうな所である。スケツチブツクの数は大ぶ塞げているが、うまいスケツチの出来ないので閉口している。 鉛筆でスケツチしたものを宿に帰つて一色塗つて置くやうな事もあるが、余り色でスケツチしたものといふはない。対象物の姿勢なり、塊なり、その性格だけ等を描いたものが多い。たまに手一本位描いて見る事もあるが、殆どすつかり小さいなりに纏めて、描き上る事は、何んとなく余り効能がないやうで、姶んどやつていない。私のは縮めていふと対象物の性格、調子、事件にとどまつている。それ以上の場合にはブロツクを用ひている。 （大正六年八月・みづゑ） |
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